どうか早く、君の抱える傷が癒えたらいい。
重みに耐え切れず溺れる様に酔う君を見ているの、
結構辛いんだよ。君は知らないだろうけど。
"過去の俺"なんかに縛られないでよ、ねぇ。
だから、どうか早く、

例の如く酔って喚いて寝てしまったイギリスを肩に担いで店を出た。
夜の冷えた空気と彼の体温の差がちょっと可笑しい。
空は真っ暗で、光っているのは街灯ばかり。それに照らされた夜道をイギリスを引きずるようにして歩く。
「君、重いよ」
なんとなく言った。さして重いわけでは無いけど、なんとなく。
「子どもじゃ無いんだから、自己管理くらいして欲しいよ……」
と呟いたら、うるせぇ、と小さく返ってきた気がしたので、起きてるのかい? と問う。返答は無い。
ちらりとその、自分のとは違う金髪を見て、また視線を前方に戻した。
やっぱり空は曇っていて、星も月も見えない。君の気分みたいだね、と思った。
「……重いなぁ」
何が、とは口に出さない。出せない。よいしょ、とイギリスを担ぎ直す。
こうして君を担いでいると、君の傷までも支えてる気分になって、少し切なかった。悔やんではいないけど。
「重いなぁ」
もう一度呟いて、俺はため息をつく。

"今の俺"を見て。
こうして熱を感じれているのに、君はどうしてこれほどに遠いの?
ねぇ、"これから先の俺"を見て。
そうしてくれるのなら、その重みを俺が全て肩代わりするくらいの条件は呑むからさ。

何もできないことがこれだけ辛いなんて知らなかった。

→Side E.