お前に遺された傷が、永遠に癒えなければいい。
そしたらどんな形であってもお前は俺を忘れられないだろう?
ヒーローだもんな? 傷ついてる奴はほっとけねぇよな?
だから、傷よ、

伝わる熱に、妙に冷静に心の中ではっと刺々しく笑った。君、重いよ、とかその熱の持ち主はぐだぐだと言っている。嘘付け、馬鹿。
「子どもじゃ無いんだから、自己管理くらいして欲しいよ……」
「うるせぇ」
小さく言うと、起きてるのかい? なんてアメリカは言った。返答は返さない。
黙ると、夜道には一人の足音と一人の引きずられるような音だけだ。
星の煌く音さえも聞こえそうだが、いつも通り空は曇っているだろう。目を閉じているから分からないけど。
だが、その分だけ皮膚と耳がアメリカを感じる。
「……重いなぁ」
重かねぇだろ、何言ってんだ。いつも貧弱貧弱と言う癖に。呟きは、心までで留めておく。
よいしょ、とアメリカは俺を肩に担ぎ直して、もう一度重いなぁと呟いた。……意味は知っている。
「どうしてそれほど」
一晩酒に流さなきゃやっていけないほどのソレを抱えているの。
聞こえたため息に、もう一度心ではっと笑った。

癒えてくれるな。
重みに呻き声をあげれば、お前は俺を忘れないだろう?
それでいい。そんなものでもいい。
お前がこうして熱をわけてくれるなら、それだけでいい。

今更、狡い手を打つことに躊躇いは無かった。
→Side A.