Sleep in Rose の香月来夢様から頂きましたv 相互記念で「既にデキてる上で喧嘩する仏英」をリクエストさせていただいたのです。 うふふ、ケンカップル仏英v ありがとうございました! |
罵詈雑言の応酬なんて軽い挨拶にすぎない。 手が出て、足が出て、ついでに周囲に甚大な被害も出して。 それでこそ俺らの在り方なのだ。 喧嘩は愛情表現の一種です 良い夢を見ていたのに目覚まし時計に遮られた。 オムレツを作ろうと卵を割ったら、珍しく失敗して黄身が潰れた。 階段を下りていたら、最後の一段を踏み外して足の裏を擦った。 一つ一つは些細なことだけれど、続けて起きれば嫌にもなる。 とりあえず今日の俺はとても機嫌が悪かった。 イギリスに会いたい。 抱きしめて他愛ない話をして一緒にお茶でも出来れば、こんな風にささくれだった気持ちも癒えるだろうに。 けれど、ついてない日というのはとことんツキがないものだ。 まず、今日はEU会議だった。 イギリスに会えることは会えるが、二人きりになるチャンスは会議が終わるまでない。 次に本日の議長国が俺だった。 そのため準備で忙しくて、イギリスが来てもゆっくり話をすることも叶わなかった。 更に今日の議題についての最終調整をドイツとしなくてはならなかった。 尤も、イタリアが転んだ拍子に水差しの水を被ったとか何とかで、ドイツとはあまり話が出来ずに終わったけれど。 要するに俺の機嫌は一向に回復しないまま、会議が始まってしまった。 早々にイギリスとドイツの間で意見が割れた。 元々、今日の議題に対してイギリスは決して肯定的な立場ではなかった。 だから、俺とドイツが調整しきれなかったところを突いてきた。 議長国としては双方の意見をまとめなくてはならないのだが、俺自身がドイツに近い意見であるだけに自然とドイツ側の意見に傾く。 「お前はEUを何だと思ってるんだ!!」 「金勘定もまともに出来ねー奴が財政についてなんか語ってんじゃねぇよ!!」 俺とイギリスのそんな言い合いがきっかけだったのだと思う。 「うるせぇ、元ヤン!!」 「黙れ、ヒゲワイン!!」 がたりと立ち上がったのは二人とも恐らく同時だった。 互いに相手の胸ぐらを掴む。 「いつも反対しかしねーって、テメェは子供か!!」 「議長国としての義務も果たせないような奴に言われたくねーよ!!」 いつもならこの辺りでドイツの怒声が飛ぶ。 実際、今日も飛んできたのだけれど、止まれなかった。 そのくらいには機嫌が悪かった。 空いていた左手をイギリスの顔面目がけて繰り出した。 イギリスの左手も同じように飛んできて、互いの右頬に拳が入る。 口の中が切れたような気がしたが気にしない。 互いに距離を取って相手を睨む。 「はっ、お前は良いよな。EU以外にも英連邦とかアメリカとか、逃げ場はいくらでもあるもんな」 「お前ら大陸組の馴れ合いにはいい加減うんざりしてんだよ」 イギリスが思いっきりテーブルを蹴り飛ばす。 動ける範囲が広がったと同時にイギリスが回し蹴りを仕掛けてきた。 身体をわずかに後ろに引いて避ける。 イギリスがややバランスを崩しかけたところで間合いを詰め、鳩尾を狙って拳を向けるが、入ったと思った瞬間、顎に頭突きを食らった。 また距離を取ったとき、足に何かが当たった。 それは俺が数分前まで座っていた椅子で、立ち上がったときの衝撃で今はひっくり返っている。 咄嗟にその足を掴んで振り回すと、イギリスも同じことを考えていたらしく、椅子の背もたれ同士がぶつかって大きな音を立てた。 がいんっ!!と何度か背もたれをぶつけ合う。 力を込めて振り回していると、勢い余って椅子が手から離れて飛んでいった。 イギリスはそれを椅子で迎えてどこかに飛ばしたが、イギリスの持っていた椅子もまた彼の手を離れた。 形勢は再び五分に戻る。 先に動いたのはイギリスだった。 降ってきた踵落としを、顔の前で腕を交差させることによって受け止め、もう一方の足に足払いをかける。 倒れかけたイギリスに拳を打ち込むが、腕を掴まれて投げられた。 お互いすぐに体勢を立て直して右足で蹴り上げた。 足同士がぶつかった衝撃は双方に吸収される。 俺が肘鉄を仕掛け、イギリスがそれを止めると共に膝蹴りで応酬し、俺は鳩尾目がけて飛んできた足を思いっきり叩いて止める。 次の瞬間にはイギリスの回し蹴りが続いていて、それを脊髄反射だけで避けて、イギリスを蹴り返す。 「いい加減に諦めろよ」 「それはこっちの台詞だ、ワイン」 どちらからともなく手を伸ばして相手の胸倉を掴む。 イギリスが笑った。 全てを見下す、余裕めいた表情。 だから俺も口角を上げる。 口づけは俺から仕掛けた。 イギリスを独占出来ていると思うだけで、幸福な気持ちになった。 「それで、お前はどうしてそんなに機嫌が悪いんだ?」 唇が離れると同時に、互いに胸倉を掴んでいた手も離れ、イギリスがつまらなさそうに聞いてきた。 「まぁ、色々とあったのよ。寝覚めが悪かったりとか、卵割ったら黄身が潰れたりとか、階段一段踏み外したとか」 「くっだらねぇ」 「続けて起きると機嫌も悪化するの。あー、少しスッキリしたかも」 伸びをすると気分も大分良くなった。 「おい、フランス。これ」 そう言ってイギリスは床から拾い上げた紙をこちらに差し出してきた。 見れば、流麗だがどこか固さのある文字が並んでいる。 ドイツの筆跡だ。 『会議続行は不可能と判断し、強制的に解散した。この続きは日を改めて、俺の家で開催する。詳細は追って連絡するが、次回までにフランスは機嫌を直しておくように。尚、お前らの乱闘(主に飛んできたテーブルと椅子)により、数名の負傷者が出ている。いずれも怪我の程度は軽いが、相応の補償はするように』 「うわー」 落ち着いて辺りをよく見れば、それは酷い有様だった。 テーブルや椅子はひっくり返っており、負傷者が出たというのも頷ける。 俺の家だという安心感からつい手加減なしで暴れてしまった。 「負傷者への補償はお前がしろよ」 イギリスが冷たく言い放つ。 「え!?ここは折半でしょ!?」 「機嫌の悪いお前に付き合って喧嘩してやったんだから、それくらい当然だろ?」 「イギリスのケチー」 「頬を膨らますな、気持ち悪い」 ちぇーと言いながら倒れている椅子の足を掴んで起こす。 「フランス、今日のアフタヌーンティーの用意は?」 「そんなもんしてるわけないでしょー」 「アップルパイ食いたい」 ちらりと時計を見やれば、今から準備すればぎりぎり間に合う時間だった。 会議も解散してしまったわけだし、用意出来ないことはない。 「でも片付けとかしなきゃなんないし」 「それは俺がしておく。…か、勘違いすんなよ。思いっきり暴れたからちょっとお腹が空いただけで、別にお前が作ったアップルパイが食べたいってわけじゃないんだからな!!」 なるほど、お兄さんが作ったアップルパイが食べたいんだね。 「分かった。俺もお腹空いたし、作ってくるね。ここ、任せて良い?」 「あぁ。フランス、」 部屋を出ようとすると、イギリスに呼び止められた。 「なに?」 「…アップルパイの出来によっては補償をいくらか肩代わりしてやっても良い」 「じゃあ、イギリスが全額肩代わりしたくなっちゃうようなの作ってくるね」 「なっ…どんなに譲歩しても折半までなんだからな!!」 「はいはい」 何だかんだ言って折半してくれる気はあるらしい。 久し振りの派手な大喧嘩と、その後のいつものやりとりにすっかり気分が浮上した俺は、足取り軽くキッチンへ向かった。 END |
ケンカップル!(きらきら 英の格好よさとか、仏の色気とかにクラクラきました。英がクールだ、元ヤンだ! でも最後ツンデレかわいいvv そして、喧嘩シーンにほれぼれしました。あああ、素敵すぎる……! 香月さん、素敵な喧嘩仏英をありがとうございましたv あと、ひそかにこのお話のドイツが大好きです。 |