米が二卵性双子の兄妹だったらというネタ。便宜上アルフレッドとベアトリクスです。












「ねぇ、アル。本当にやるつもりなの」

背後から聞こえた声は不満げで、批判的で、すっごく悲しげで、その声に俺はすっごく不満げで、批判的で、悲しい気持ちになったから、同じくそんな声で返した。

「それ以外あるのかい?」

振り返ると俺と同じ色の目がじっとこっちを見ていた。よく、似ていると言われた顔。俺とカナダみたいに瓜二つという訳じゃなくて、ただ何となく、似ていると言われる顔。俺は一度も自分とベティが似てるなんて思ったことは無いのだけれど。多分あっちもそうだと思っている筈だ。
じっと見返して、やっぱり似てないと思う。全然違うじゃないか。
肩より少し下くらいの髪はくるくると巻いていて、その肩は俺のとは比べものにならないほど細いし、そこから流れる線も曲線で、身長も俺よりは低い。
ベティは何も言わずにこっちを睨みつける。泣くかな、とふと思った。
嫌だな。これは俺の所為になるのかい? またイギリスに怒られるじゃないか。
妹を泣かせんな、という声が頭の中で聞こえて、そのまま頭はかちり、と固まった。

俺は、俺たちは、兄から発つ。

「無いんだったら言わないでくれよ」
そう、努めて感情を示さぬ声で俺は言った。泣かせたってしるものか。それに妹と言ったって同い年だし。
「……じゃあ、イギリスを殺すの?」
ベティは、同じ様な声で言った。あぁ、やっぱり俺たちは似てるのかもしれない、なんてぼんやりと思いながら、言葉の意味を考える。

俺たちは、兄を、殺す?

「……なんで、そうなるんだ?」
ただ、独立を認めて貰うだけだ。それにはベティも賛成だろう? フランスだって手伝ってくれる。
「それでも、イギリスが認めてくれなかったら? その時はどうするの。どうしたらいいの」
ねぇ答えてよ、アル。
「イギリスはどうなるの?」
俺は、しらないよ、とだけ答えた。だって俺は、イギリスは認めてくれるって信じてるから。

きっと大丈夫さ、と笑いかけたのは自分のためか彼女のためかはわからない。

大丈夫さ、きっと。きっと。
そう言い聞かせても心の中の不安は消えなくて、イライラした。