「暗いのが怖い?」

優しい声で、赤子に語りかけるような声で、フランスは尋ねた。イギリスが目をそちらにやると暗がりの中に青が浮かんでいる。何を反射してか、薄闇の中きらきらと光っている。毛布の下のさっきから繋がれっぱなしの右手を、きゅっと力を込めて握られた。

「……何で」
「眠れないようだから」

見てたのか、何だよ気持ち悪い。つかそろそろ手離せ。
そんな言葉をぐっと飲み込んで、彼は何も答えずにフランスとは逆側へ寝返りをうった。

今更だけど、二人同じベッドの中にいる。というわけでも何をする訳でも、した訳でもない。ただ同じベッドの中、手を繋ぎ、繋がれ、一緒にいる。

イギリスはぎゅっと目を閉じて、早く早く夢の中に墜ちようとした。早く、深く。

するとフランスはゆるりと繋いでた右手を解いて、背を向けてしまった彼を抱き寄せた。抱き寄せたといっても男二人、広めとは言ってもベッドには限りがあるから、ほんの少しひっついただけ。
目を閉じているイギリスはその腕を、温度を、拒まなかった。拒まないくらいに慣れていた。その温度の中、夢に急くことも数えきれない。
彼らにしてみれば、この事態は特に稀なことではない。
眠れぬイギリスに眠らぬフランスが声をかけて、抱き寄せて、温度をわけることも稀なことではない。

でも、暗いのが怖いかなんて、聞かれたことは無かった。
イギリスは目を閉じたまま、夢に沈もうとしながら思う。俺がお前の前でいつ暗闇を恐れた。何か、そういう素振りをしただろうか。
別に眠れないなんて珍しいことじゃない。そんな時、眠れないの、とは尋ねてきたけど、怖いか、なんて。

あたたかな闇の中、その暗さも深さも怖いはずが無い。
このまま、早く早くそのあたたかな夢の中へ、その暗く深い夢の中へ墜ちてしまえ。

イギリスは右手を、彼の右手に重ねた。あたたかい。すぅっと息を吐く。

「……お前は」
「ん?」
「お前は、暗いのが怖いのか?」

目を閉じたまま、僅かに小さな声で背後へ問いかける。耳近くにフランスの声を感じて、ぐっと体が緊張した気がした。

「いや」
「……そうか」
「どうして」
「べつに、何でもない」

そう、とフランスは呟いた。そしてその後、もう寝ろ、と続けた。
イギリスはその右手に少しだけ力を込めて返事した。
あたたかい闇の深いとこまで
お前とともに沈んでいこうか。