隠しきれぬ笑みを唇に浮かべてイギリスは言った。

「チェックメイト」

日本はその黒い瞳を何度も白黒の盤上を行ったりきたりとさせた後、彼にしては珍しく背もたれに体を預けきった。

「また負けてしまいました」
「いや、筋はいい」

言っても、日本は軽く首を横に振って、まだまだです、と否定した。今のとこイギリスは全戦全勝。始めたばかりの日本と違って、もう何十年と言わず何百年もやってるのだから当たり前と言えば当たり前だ。イギリスも盤をもう一度見て、余裕に勝てるのも今のうちだけだろうな、と思った。少しの緊張と期待が心に湧く。きっとアメリカあたりとは互角か、それ以上になってるだろう。あいつはあまりこういうのが得手ではない。そういえばアメリカと昔はよくやったのに今はさっぱりだな。

「この、取った駒を使えない、というのがどうにも」

慣れませんねぇ、と日本は言って、黒い駒を手に取る。黒のビショップ、後半になってイギリスが切った駒だ。
それにつられてイギリスも、日本が捨てた駒を手に取った。白のナイト。こちらは比較的前半の方でゲームから外れている。

「慣れないか」
「ええ。どうしても使えると思って計算に入れてしまうのですよ」

そういえばたまに変な手があった、と思ってイギリスはああ、と納得した。

「そっちのチェス……ショーギっていうのは確か使えるんだったな?」

どうして『やられた』駒が相手の物となって使えるのかはわからないが、確かそういうルールだった。日本は頷いて、そうなんですよ、と苦笑した。そして、持っていた駒を定位置に置く。

やるのか、と尋ねると、
お願いします、と彼は顔をひきしめた。
→case of another game