くつを、と上擦った声が聞こえて日本は振り返った。

「やっぱり靴を脱ぐのか?」
言った本人の頬は赤くなっていて、純粋にどうしたのだろう、と思った。

「ええ。わたしのとこではそうなんですよ」
イギリスはそうか、と言って自分の足元を見る。
そして、ふはぁ、と大きく息を、ため息ではなく気合を入れるときのように吐いた。

「どうされました?」

「いや、……なんでもない」
それでも頬は赤いままだ。慣れてないからだろうか、と適当に理由付けをする。
かわいらしい、と思って日本はこっそりと微笑した。
彼は後ろを向いて玄関先に座り、靴紐をほどき始めた。きつく締められたそれが白い指にそって緩んでいく。

「日本は」
ほどきながらイギリスは聞いた。
「その、人前で靴を脱ぐことに、抵抗は無いのか?」

「いえ、特に」

やっぱり彼は抵抗があるのだ、とその質問で感じた。
今度から家に招くよりもどこか外で会った方がいいかもしれない。

「なら、そう……うーん。いや、いい」

日本は首をかしげながらも、立ち上がったイギリスに、こちらです、と庭に面した部屋へ案内した。

廊下には、靴下で歩くやわらかい足音がたっている。


その後の話。
「前、イギリスさんがすっごく靴を脱ぐのを躊躇われたのですけど、ドイツさんもお嫌ですか」
「こっちではベッドルームくらいでしか普通脱がないからな……」

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英国人にとって素足は恥部ってのを本で読んで。(中国人もそうらしいですね
素足を晒す=寝室での行為 ってくらい強烈なものらしいです。

この話では靴下履いてますがね!