聞いてるのかい、とちょっと不満げな声が尋ねた。 あー聞いてる、と適当に流すような声が答えた。紙のめくる音がする。 アメリカはむっと頬を膨らました。 「聞いてないじゃないか」 イギリスはホテルの部屋に備え付けてある机から振り返った。机の上にはいっぱい書類がつまれてある。明日も続く会議に使うものだろう。 「だから、聞いてるって言ってるだろ」 さっきからなんなんだよ。 「君こそさっきからあーだのうーだの適当な返事してない。せっかくコーヒー入れたげたのに飲まないし」 「飲むか、ばか」 はぁ。アメリカは大げさにため息をついて、座っていたベッドに後ろから倒れこんだ。 もうこのまま寝てしまおうか、なんて思いながら目を閉じる。 今日の会議で俺も疲れてるんだぞ、とも心の中で付け加えた。 何の理由にもならないことはちゃんと理解している。それを言うならイギリスも同じだからだ。 そんな様子を見てイギリスは、同じ様にため息をついて椅子から立ち上がった。 自分のの筈のベッドに腰掛けて、それを占拠してる男に話しかける。 「おい、寝るなら自分の部屋帰れよ」 「いやだ」 「ガキか」 そう言ってイギリスは笑うから、またむっとしてアメリカは寝返りをうった。ぎゅっとシーツを握る。その様子にまたイギリスは笑った。自分のと似た色をした髪を取って、撫でる。サラサラという感触が心地いい。 「本気で寝るつもりか」 「もう寝たよ」 と言う。君が構ってくれないのがいけないんだ。 「じゃあ起きろ」 聞いてやるよ。 その声も、髪を撫でてくるその手も、あまりに優しいから。 このまま寝てしまってもいいか、と思った。 君の子どもでいられないから独立したのに、 まだなお俺は、君の子どもでいようとしている。 あの頃とは違う思いの筈なのに、どこに落ち着かせればいいかわからないんだ。ねぇ、 |
こっちをむいて |